新国立競技場の設計者にも選出され、現在では一般の人にも広く知られている建築家、隈研吾(くまけんご)は木材を用い「和(日本」をイメージさせるような建築を数多く手がけ、それらが世界的にも評価されています。また、最近では建築のみならず、家具、食器、スニーカーなどのデザインも手掛け、多方面にわたって活躍しています。今回はそんな隈研吾の建築を紹介します。

日本を代表する建築家・隈研吾とは!?

隈研吾
Via: Wikipedia.

1954年(昭和29年〉8月8日 生まれ、神奈川県横浜市出身。東京大学工学部建築学科では、数多くの著名な建築家を排出する建築家・原広司の研究室に所属していました。日本の大手設計事務所である日本設計、戸田建設や米国コロンビア大学建築・都市計画学科客員研究員を経て、1992年に隈研吾建築都市設計事務所を設立。日本のみならず海外でも多くのプロジェクトを抱え、2008年にはフランス・パリにも事務所を構えました。

独立後はドーリック南青山ビルやM2など、当時日本でも流行っていたポストモダニズムのスタイルの建築を発表していたが、高知県にある梼原町の「ゆすはら座」存続するプロジェクトへの関わりからその建築スタイルが大きく変わることになります。その後は、木材などの自然素材を生かし、ルーバーなどを多用する建築が彼の特徴的なデザインとなりました。

これまでの受賞歴として1997年(平成9年)には日本建築学会作品賞(登米町伝統芸能館)、2001年(平成13年)に村野藤吾賞(那珂川町馬頭広重美術館)、2010年(平成22年)は 毎日芸術賞(根津美術館)、2011年(平成23年)は術選奨文部科学大臣賞(梼原・木橋ミュージアム)などがあります。

1.東京オリンピックのメイン会場でもある「新国立競技場」

新国立競技場
Via: Wikipedia.

「新国立競技場」は、2021年(令和3年)に開催された、東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアム。2012年に開かれた国際コンペでザハ・ハディドによるデザインが選出されましたが、工期・費用などの問題や国民やアスリートからの批判を受け、再コンペの上で隈研吾と大成建設・梓設計のチームの案に決まりました。

47都道府県で産する木材を使用し、都道府県の日本列島における地理的位置(方角)に合わせ配置された設計にで、木のファサードと庇が重なり、日本ならではの軒下空間を作り出したの美しさをデザインになっています。また、樹木の多い周辺環境との調和も重視され、神宮外苑の環境にも良く馴染んでいます。

新国立競技場

URL : https://www.jpnsport.go.jp/kokuritu/
住所:〒160-0013 東京都新宿区霞ヶ丘町10−1

2.架構形式による唯一の建築「梼原 木橋ミュージアム」

梼原 木橋ミュージアムは、「雲の上のホテル」と「雲の上の温泉」を連結する通路であり、“雲の上のギャラリー”というミュージアム機能を持った建築です。

幾つもの木が重なるデザインは「刎橋(はねばし)」という江戸時代の日本に存在した架橋形式に基づき形成されています。中央の橋脚を中心に両端のバランスを取る「やじろべえ型刎橋」という新たな形式は世界でも唯一と言えるでしょう。また、梼原産の杉を使用し「梼原の象徴」として迫力のある存在感も表現しています。

雲の上のギャラリー(木橋ミュージアム)

開館時間:10:00~16:30
住所:〒785-0621 高知県高岡郡梼原町太郎川 雲の上のギャラリー

3.ルーバーを使った日本家屋らしい建築の「那珂川町馬頭広重美術館」

那珂川町馬頭広重美術館
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那珂川町馬頭広重美術館は、栃木県那須郡那珂川町にある浮世絵師・歌川広重の作品を中心に広重に関連する作品を展示する美術館です。

「広重の芸術と伝統を表現する伝統的で落ち着きのある外観」をコンセプトとして設計され、平屋建ての切妻の屋根を採用し、内装にも地元の材を使い、壁は烏山和紙、床は芦野石でつくられており、日本ならではの伝統家屋らしさを感じます。隈研吾は、この作品により林野庁長官賞や村野藤吾賞などを受賞しています。

那珂川町 馬頭広重美術館

開館時間:9:30~17:00
URL : http://www.hiroshige.bato.tochigi.jp
住所:〒324-0613 栃木県那須郡那珂川町馬頭116−9

4.石という素材を追求して作られた「石の美術館」

石の美術館
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芦野石の産地として有名な栃木県那須町芦野に建つ「石の美術館」は、80年前の石造りの蔵を展示空間として再生させた美術館です。その名前の通り石をテーマにした美術館であると同時に設計自体も石の可能性を追求した建築になっています。

敷地内には池が張り巡らされ各建物を石橋でつなぎ全体を1つのアートとしてデザインされています。石を組み込んだルーバーや三分の一の石を抜き取って組み合わせたディテールを検討し、石ならではの空間を実現しました。また、石蔵内側には那須町・伊王野地域の木を用い、木の柱組で構築し、木と石の融合を魅せていることも特徴的です。

那須芦野・石の美術館 STONE PLAZA

開館時間:10:00~17:00
休館日:月曜日
URL : http://www.stone-plaza.com
住所:〒329-3443 栃木県那須郡那須町芦野2717−5

5.都会の喧騒を逃れる日本的な建築の美術館「根津美術館」

根津美術館
Via : Wikipedia.

東京都港区南青山にある「根津美術館」は、日本では数少ない第二次世界大戦以前からの歴史を持つ私立美術館です。国宝に指定される物を含めた日本・東洋の古美術品コレクションを数多く収蔵しています。

切妻屋根の日本的なヴォリュームで、隣接する池を中心とした美しい日本庭園に向かってガラスのカーテンウォールで大胆に開き、環境と調和する建築になっています。そのため、作品を鑑賞するだけでなく、都会の喧騒から逃れ静かに過ごすことができる場所としても機能しています。

根津美術館

開館時間:10:00~17:00
URL : https://www.nezu-muse.or.jp
住所:〒107-0062 東京都港区南青山6丁目5−1

6.ポストモダン建築であり隈研吾初期の代表作「M2ビル」

M2ビル
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隈研吾初期の代表作「M2ビル」は、自動車メーカーであるマツダの東京の拠点の一つとして環八沿いに1991年にオープンしました。現在は、東京メモリードホールという斎場として使われています。

日本ではポストモダン建築の一つとして有名で中央を貫くイオニア式の柱に模したデザインが一際目を引きます。建築自体は国内外で大変話題になっていましたが、外観の独特な風貌などから、当時の建設界からの評価はいいものとは言えず、隈さん自身も評価が芳しいものではありませんでした。

M2ビル

住所:〒157-0073 東京都世田谷区砧2丁目4−27

7.運河を跨いでつながりを生む美術館「長崎県美術館」

長崎県美術館
Via : Wikipedia.

「長崎県美術館」は、外交官・須磨弥吉郎の寄贈したコレクションを基礎にしたスペイン美術品や長崎ゆかりの美術品を所蔵、展示しています。

長崎県美術館
Via : Wikipedia.

川を挟む2つのヴォリュームからなる建築で、2階の渡り廊下が建築を一つに繋いでいます。屋根上は緑で覆い「緑のミュージアム」として、矩形のガラスのヴォリュームに木のルーバーを施し、運河とも調和するデザインになっています。この建築は、日本建築家協会賞やグッドデザイン賞など数々の賞を受賞しています。

長崎県美術館

開館時間:10:00~20:00
URL : https://www.nagasaki-museum.jp
住所:〒850-0862 長崎県長崎市出島町2−1

8.伝統的な木組み構造を用いた特徴あるデザインの「スターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店」

スターバックス 太宰府天満宮表参道店

隈研吾が手がけた福岡の太宰府天満宮の表参道にあるスターバックスコーヒーは、ファサードが非常に特徴的で道行く人が必ず足を止めます。

この特徴ある木組みのデザインは「自然素材による伝統と現代の融合」というコンセプトのもと設計されました。釘を一本も使わない伝統的な木組み構造を用いた特徴あるデザインが採用され、それ自体が空間を包み込み、木のぬくもりとコーヒーの香りを楽しむことができる空間になっています。

参考:隈研吾が手がけた、太宰府の伝統と現代性が融合したスタバの釘を1本も使わない木組みの美しい空間。

スターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店

営業時間:8:00~20:00
URL : https://store.starbucks.co.jp/detail-1058/
住所:〒818-0117 福岡県太宰府市宰府3丁目2−43

9.「アオーレ長岡」

長岡市シティホールプラザアオーレ長岡
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隈研吾が設計した新潟県にある長岡市シティホールプラザ「アオーレ長岡」は、長岡市役所本庁舎やアリーナ、市民交流ホールなどが複合した交流施設です。愛称のアオーレは、長岡弁の「会いましょう」を意味する「会おうれ」をもじったもの。

市役所などが入る東棟・西棟とアリーナ棟の3棟が配置され、中央にはガラス張りの屋根付き広場「ナカドマ」があります。ナカドマは、季節や天候を問わず市民が集う場としてデザインされました。外装部の市松模様は長岡城の市松模様をモチーフにデザインさえれ、地元の越後杉を用い制作されています。

長岡市シティホールプラザアオーレ長岡

営業時間:8:00~22:00
URL : https://ao-re.jp
住所:〒940-8501 新潟県長岡市大手通1丁目4−10

10.家型が積み重なったようなデザインが特徴的な「浅草文化観光センター」

浅草文化観光センター
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「浅草文化観光センター」は、東京都の観光名所・浅草の角地に建つ観光案内所などが入った複合施設です。2008年のコンペで隈研吾が設計者として選出され、2012年にオープンしました。

杉の木を使った縦のルーバーと家型のヴォリュームを縦に積み重ねたようなデザインの外観が印象的な建築です。夜になると照明と縦のルーバーが夜の街並みに映え、スカイツリーの電飾と共に浅草の街を彩っています。

浅草文化観光センター

開館時間:9:00~20:00
URL : https://www.city.taito.lg.jp/bunka_kanko/kankoinfo/info/oyakudachi/kankocenter/a-tic-gaiyo.html
住所:〒111-0034 東京都台東区雷門2丁目18−9

11.無形文化遺産である歌舞伎の劇場「GINZA KABUKIZA」

歌舞伎座
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隈研吾が改修を手がけた「GINZA KABUKIZA」は、日本を代表する歌舞伎専用の劇場「歌舞伎座」とオフィスビル「歌舞伎座タワー」からならる複合施設です。

2013年に竣工した建築は第4期のデザインを引き継ぐ形で和風桃山様式が採用されています。柱の無い空間を構成し、上層部のオフィス部分も無柱とした合理的な構造が採用されました。タワーの外装は歌舞伎座の伝統的な漆喰を使っています。

GINZA KABUKIZA(歌舞伎座タワー)

住所:〒104-0061 東京都中央区銀座4丁目12−15

12.多面体の岩のようなデザインの「角川武蔵野ミュージアム」

角川武蔵野ミュージアム
Via: Wikipedia.

隈研吾の設計で2020年にオープンした「角川武蔵野ミュージアム」は、巨大施設「ところざわサクラタウン」の一部で、図書館、博物館、美術館を融合した巨大複合施設です。

1つの重さが50~70kgにおよぶ花岡岩を用いた外観は、本当に一つの岩のようなデザインで迫力があります。見る角度や光の加減によっていろいろな表情を見せてくれます。内部には高さ8メートルの巨大な本棚の空間「本棚劇場」があり、建築としてもKADOKAWAの文化施設としても楽しめます。

ミュージアム内には建築物自体を解説するような展示もあり、自然素材の石と木を用いた隈研吾のこれまでの代表作の模型を展示しています。

角川武蔵野ミュージアム

開館時間:10:00~18:00(金・土曜日~21:00)
URL : https://kadcul.com
住所:〒359-0023 埼玉県所沢市東所沢和田3丁目31番地3 ところざわサクラタウン

13.隈研吾が建築のデザイン監修した日本初進出の「エースホテル京都」

デザインホテルの先駆けと言われる「エースホテル」の日本初進出の場所となったのは、京都・烏丸御池にある大正時代の名建築・旧京都中央電話局を活用した「新風館」。新風館のリニューアルオープンとともに隈研吾が建築のデザインを監修。

ランドマークとして親しまれたきた歴史ある「新風館」を最大限活かしながら「伝統と革新」というコンセプトを継承し再開発計画が行われました。

従来の「新風館」に今回「新築棟」を増設し、ルーバーや木組みといった隈研吾らしいデザインを取り入れ、伝統を残しつつ新しさも融合した京都の街並みに調和するデザインとなっています。

エースホテル 京都・新風館

URL : https://acehotel.com/kyoto/
住所:〒604-8185 京都府京都市中京区車屋町245−2

14.雲をイメージした屋根が特徴的な「雲の上のホテル」

雲の上ホテル梼原
Via:Wikipedia

隈研吾自身の転機となった梼原町にある「雲の上のホテル」は、隈研吾が手がけ、1994年にオープン以来、町のシンボルとして旅行者や町民に親しまれてきました。現在は、建物の老朽化により2024年再開を目途に建て替え作業が行われています。

雲の上のまちをテーマに、雲をイメージした飛行機の翼のような屋根が特徴的です。以前は、屋根の下には青空と星を映しこむための池が設置されていました。隈研吾によって再度新しく生まれ変わる姿が愉しみですね。

雲の上のホテル

URL : https://www.kumonouegroup.com
住所:〒785-0621 高知県高岡郡梼原町太郎川3799−3

15.木を用いて構造としても設備としてもユニークな建築となった「梼原総合庁舎」

Via : Wikipedia.

「梼原総合庁舎」は、林業の町であった梼原町らしく「木の町役場」として町の交流の場所として建てられました。2006年に銀行や農協、商工会などの機能も複合する施設としてオープンしました。

18メートルという長いスパンを飛ばす集成材を用いた梁を使ったり、大型の折れ戸を用いて環境をコントロールしたりと木を用いて新たな試みにチャレンジするだけでなく、ランニングコストの削減など設備的な面でも斬新な建築となっています。

梼原総合庁舎・梼原町役場

開館時間:8:30~17:15
休館日:土・日曜日
URL : http://www.town.yusuhara.kochi.jp
住所:〒785-0695 高知県高岡郡梼原町梼原1444−1

日本的であり未来的でもある建築を手がける隈研吾

今回紹介した建築家・隈研吾の建築の多くは、歴史やその地域の景観を活かし、現代の発展に貢献しているものばかり。家型や木のルーバーなど日本を感じさせる要素が多々ありますが、カーボンニュートラルが叫ばれる未来においてもなお新しい建築なのではないでしょうか。

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