第24回JIA新人賞を受賞した住宅〈DAYLIGHT HOUSE〉や、日本建築仕上学会にて作品賞を受賞した〈ほうとう不動 東恋路店〉など幅広いジャンルの空間設計を手掛ける建築家・保坂猛。保坂さん自らが手掛けた一つ目の自邸が〈LOVE HOUSE〉。通常、建築家が建てた自邸というと、大きな建物に特徴的な造形がイメージされますが、〈LOVE HOUSE〉はなんと、3×10m、つまり33㎡の狭小敷地に建つ木造二階建。極小空間に建築家ならではの知見とこだわりが詰まった、奥さんとペットのうさぎの2人と1匹で住まう住宅です。

偶然始まった極小住宅計画

学生時代に住んでいたワンルームマンションで感じた「家の中にいるときの遮断された感じ」がきっかけで、「外が感じられる住宅」を目指して設計した〈LOVE HOUSE〉。とはいえ、元々は自邸を建てようという考えは全くなかったと言います。休日の散歩の途中の不動産屋さんでたまたま安価な土地情報を見かけ、現地を見てみたら気に入り急遽購入することになったのだそう。計画的に出来た狭小住宅ではなく、まさしく偶然によって生まれた住まいなのです。

小さいながらも外との繋がりを取り込んだ建築

photo :Masao Nishikawa

土地を見てから3時間程度で作られたというプランは、長方形の敷地の対角方向に曲線を引いたもの。少年時代を自然豊かな山梨で過ごした保坂さんの原風景から、外との繋がりを家にも取り込みたいと考えた結果、敷地を囲んでいる壁と屋根との間から光や風などを感じられる構造になったのです。

屋外と屋内が混じり合う建築

photo :Masao Nishikawa

外観はシンプルな白い箱型。正面にある玄関を開けるとまず2階へと続く階段が現れ、スロープを描きながら登っていきます。

photo :Masao Nishikawa

階段を上がるとこの住まいのシンボルになっているシマトネリコの木が目に入ります。2階にはリビングが設けられ、その奥にキッチンが配されています。

photo :Masao Nishikawa

昔から“外みたいな家“に憧れていたという保坂さんの想いから、リビングは屋外に設けられた階段側の2面がフルハイトのガラス張りとなっており、その半分以上を開放することができるため、全開放すればまさに「外みたいな家」に。

photo :Masao Nishikawa

1階には寝室と浴室があり、浴室は大きな開口が中庭に面しており、気軽にアクセスすることがでいます。

photo : Nacasa & Partners Inc. KOJI FUJII

また、建築には照明がないため、夜、1階の寝室へ降りるときは月明かりなどが頼りになります。そうした、ふと夜見上げた時の星や月の美しさが活力を与えてくれると保坂さんは話します。

狭小敷地ならではの工夫

photo :Masao Nishikawa

もちろん、理想を叶えつつ狭い敷地をうまく活用するための工夫も詰まっています。その一つが小さな建築には不釣り合いの大きな階段。これは「スケール感が狂って家の大きさがわからなくなる」という効果を狙って意図的に設計されたもの。玄関先に見える階段は、1階からはその先端が見えない程度の大きなカーブを描いて2階へと続きます。長くて幅広の階段をゆったりと上がる体験は、〈LOVE HOUSE〉ならではの特徴です。

「屋内でもなく屋外でもない」自然がくれる感動が日々の活力を与えてくれる住まい

一見風変わりな極小住宅〈LOVE HOUSE〉は、保坂さんの知見と感性が生かされた、日々の暮らしを自然と共に楽しむ住まい。豊かな暮らしには物理的広さは関係ないと、改めて本当の心地よい暮らしや生き方を気づかせてくれる住宅です。

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